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東京高等裁判所 昭和35年(く)105号 決定 1960年12月19日

少年 M(昭一八・一・七生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、抗告人は日立市○○町○○番地○田○造方に自動車助手として今日まで真面目に働いていたもので今回自分の不注意により酒の上からとはいえ本件を犯し誠に申訳なく反省悔悟している。本件は初犯であり両親共健在で自分を引取り十分指導監督することを誓つているから原裁判所が少年院送致の決定をしたのは相当でないので抗告に及んだというにある。

よつて抗告人に対する少年保護事件記録並びに少年調査記録を調査するに、原裁判所は、抗告人に対する少年保護事件につき昭和三五年九月二〇日恐喝、銃砲刀剣類等所持取締法違反の事実を認定して中等少年院に送致する旨を言い渡したものであるところ、原決定にもいうように、抗告人は高等学校在学中にも非行により二回無期停学処分を受けたものであるが、昭和三五年三月無断両親の家より家出し、その後少年○岡○規を恐喝して腕時計を喝取したため警察に検挙され、又同年五月頃当時働いていた鉄工所において自ら刃渡り約二〇糎、幅約二糎のあいくち一本を作りこれを止宿先○田○造方に隠匿所持していたものであつて、抗告人の父は福島県の家に抗告人を連れ戻して農業に従事させたいと希望し、右○田○造は元の如く自己のところで使用したいと述べており抗告人自身は直ちに父の許へ帰ることを欲せず日立市の○田方に帰ることを望んでいるのであるが、右○田方に引取らせるとしてもその環境上危険性極めて濃原であり、又強いて実家へ帰してもその父母の保護に委かすことが必ずしも適切な処置とも考えられないのであつて、以上の点に抗告人の年令その他の事情を併せ考えると、その健全な育成を期するためには、むしろ中等少年院に収容して学問的な矯正教育を施すのが相当と考えられるので、これと同趣旨に出た原決定は正当であつて本件抗告はその理由がない。

よつて少年法第三三条第一項後段、少年審判規則第五〇条に則り本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 長谷川成二 判事 白河六郎 判事 関重夫)

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